第四幕 「母の秘密」

Madame,monsieur bonsoir...
・・・春の終わりを告げる嵐のその日、
私と友人は、少年が待つパリへとやって来たのでした。
再会の時が近づくにつれ溢れだすこの感情に、
私は静かに身震いをするのです・・・


もう今回はペッポでしょう。キャラは立ってるにも関わらず大々的な出番のなかった彼女(彼)が全編に渡って動きまくり。フェルナンを陥落して屋敷に潜りこんだということを吐露し、悪態をつく宝飾品を勝手に触るアルベールを挑発するなどやりたい放題ですが、それも清純な見掛けと裏腹な子悪魔的魅力を輝かせるばかりで厭味を感じさせないのが不思議です。(しかしそういった彼女の行動が全て、結果的に伯爵とのつながりになったり、アルベールにメルセデスへの疑惑を強まらせているところに注目したい。また、あまりにも見事にアルベールの心情を見抜いたり、離れた場所にいた伯爵とメルセデスのセリフに呼応したり、またはメルセデスが誰か若い男の写真を眺めていたということを知っていたりと、まるで人間の心を見抜く能力でも持っているかのような演出です)ペッポ役の中原麻衣の上手さに拠るところも大きいと思います。非常に優れた狂言回しであります。
前回の大々的な引きでどういうやり取りが行なわれるかと期待した伯爵とフェルナン夫妻ですが、握手を求めたフェルナン将軍に対して伯爵が複雑な一瞥を呈した以外は特に波瀾もなく晩餐へ。やや肩透かしのような気もしますが(たぶんソフトでまとめ観た時など特に)ここで安易に含みを待たせるよりも何事もなく淡々と進めたほうが物語全体としては深みが出るということでしょうか。意味付け、伏線としては後のシーンの、『ひとつ屋根の下でパンと塩を分け合ったものは、永遠の友となる』のセリフで必要充分、適度な味付けだと思います。ただ後半、伯爵の館を訪ねた一連のシーンは屋敷の舞台としてのギミックを誇張したかったのだと思いますがやや間延びして単調に感じました。伯爵がアルベールに贈った剣にはダンテス家の墓標にあったものと同じ家紋。おそらく物語の最後でこの剣が重要な役割を果たすことになるでしょう。
しかしペッポのキャラが立ちまくったおかげで同じ美少女(同じじゃないか)キャラのエデの影が・・・薄い。伯爵に寄り添う影のような存在なので仕方がないといえば仕方がないですけど。後半にかけて活躍されることを期待しております。